認知症について
~自分らしく 幸福に生きるために知っておきたいこと~
前回は認知症について、脳の構造と認知症による「物忘れ」と老化による「物忘れ」の違い等を簡単にご説明しましたが、認知症にはいくつかの種類があり、原因や症状が異なります。認知症の介護には、種類ごとの特徴を知ることも大事です。 今回は認知症の主な種類とそれぞれの原因・症状について説明いたします。
アルツハイマー型認知症
【アルツハイマー型認知症の特徴]
アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多い脳神経疾患です。発症と進行は比較的に緩やかですが放置すれば確実に悪化していきます。特徴としては、認知症状の起こる数年前、比較的早い段階でその診断が可能であるということです。紙に立体図形が書けない、時計の針を記入できないなど特徴的な変化が認められます。
発症時期は、若年性の場合40歳代から発症することもありますが多くは、加齢に伴い発症率が高くなってきます。症状は人や物の名前を忘れるなどの記憶障害から始まりますが、その数年前から軽い人格の変化が起こることがあります。具体的には頑固になる、怒りっぽくなる、情緒を解さなくなるなど不穏な性格に変化することが多いようです。
[アルツハイマー型認知症の症状]
軽度:年月日が分からなくなる
買い物時に支払いがうまくできない。
不必要な買い物をしてしまう。
中度:場所の認識ができなくなり、外出先から戻れなくなる。
季節にあった服が選べない。
自動車の運転ができなくなる。
感情障害が出る(大声を上げる、暴言を吐く等)
重度:被害妄想や幻覚などが頻繁に出現する
家族や身近な人が分からなくなる
意思の疎通が困難になる
身体機能の低下も伴い、日常生活に介護が頻繁に必要となる。
[アルツハイマー型認知症の原因]
アルツハイマー病は脳内で特殊な異常たんぱく質が増えることで発症すると言われています。この異常なたんぱく質の蓄積により、脳の神経細胞が壊れていき、脳の委縮が進みます。まず最初に脳神経が減る部分が、脳の側頭葉の「海馬」と呼ばれている部分です。この「海馬」は短期記憶を司る場所なので「少し前のことを覚えられない」という記憶障害が、病気の初期段階で起きてしまいます。
晩発性アルツハイマー型認知症の場合は、老化に伴い難聴・視力低下が進行することによりコミュニケーションをとる機会が減ることで脳の機能を使わなくなることが原因で脳委縮が起きてしまいます。
脳血管性認知症
【脳血管性認知症の特徴】
脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を起こした後、その後遺症として発症する認知症です。
突然の脳梗塞や脳出血が原因で急激に認知症が発症する場合と小さな脳血管障害を頻繁に起しているうちに、徐々に認知症が進む場合があり、これにより症状の違いも現れます。
また血管障害を受けた脳の部位によっても症状に差があり、麻痺や言語障害が多くみられます。
脳梗塞とは、脳の血管が血栓によって塞がれてしまい血流が途絶えてしまう病気で脳出血は脳の血管が破れて出血する病気です。このような障害で脳への血液量が少なくなる、あるいはなくなると脳はダメージを受けます。その時の血管障害の強さと大きさが、のちに引き起こされる認知症の程度と関係してきます。
【脳血管性認知症の症状】
脳血管障害で脳がダメージを受けた部位によって症状は微妙に異なります。
めまい、しびれ、言語障害、麻痺、感情失禁(涙もろくなる)、知的能力の低下、判断力の低下などが症状として現れますが、記憶力の低下はあるのに、判断力や理解力は保たれているなどムラがあるのも特徴です。
主症状:片麻痺
意欲や自発性低下
歩行障害
頻尿、尿失禁
構音障害(声を上手に出せない)
嚥下障害(食べ物を飲み込めない)
【脳血管性認知症の原因】
原因の7、8割は脳梗塞によるものです。
脳梗塞や脳出血などの血管障害が引き起こされる原因は、ほとんどの場合、生活習慣病と言われています。
危険因子と言われている生活習慣病は、高血圧・動脈硬化症・糖尿病・高脂血症などですので、生活習慣を見直す等の努力で、これらの生活習慣病を予防することは可能であり、ひいては脳血管性認知症の予防にも繋がります。
レビー小体病
【レビー小体病の特徴】
レビー小体病は、アルツハイマー型認知症についで多い認知症で、認知症全体の約2割を占めています。
記憶障害が多いなど、アルツハイマー病やパーキンソン病に似ている症状が現れますが、決定的に違うのは初期段階より「幻視」が多くみられることです。
訴える幻視は、「知らない子どもがそこにいる」「知らない人が寝ている部屋に入ってきた」等と本人に生々しくはっきりと見えています。
症状がパーキンソン病にも似た運動症状が現れるので、パーキンソン病と間違われることもありますが、早期に診断できれば症状の改善が期待できる疾患です。
【レビー小体病の症状】
典型的な症状:初期に幻視、幻覚を訴える
1日の内で症状の変動が著しい。
便秘、血圧変動、失禁などがみられる。
【アルツハイマー型認知症と似た症状】
:年月日が分からない
場所が分からず、外出先から戻れなくなる
記憶障害がみられる
感情的になりやすい 等
【パーキンソン病と似た症状】
:手足が震える
動作が緩慢になる
筋肉がこわばる
猫背になりやすい
嚥下障害(飲み込みにくくなる)
気絶や卒倒 等
認知症の中核症状と周辺症状
認知症は脳が原因で物忘れなどを示す進行性の病気です。症状としては、認知症になると誰にでも出る「中核症状」と認知症になってもいつも出るとは限らない「周辺症状」とがあります。
認知症になると誰にも出る症状(中核症状)
・物忘れ
・言葉が話せない、理解できない
・人の顔や道順が分からない
・計画を立てられない、実行できない
・時間や場所が分からない
認知症になってもいつも出るとは限らない症状(周辺症状)
・幻覚、妄想、睡眠障害、徘徊、興奮(暴力・暴言)
異食、介護抵抗 等々
周辺症状は、いつもこういった症状が出るとは限りません。 認知症の方を介護するとき「大変だなぁ」と思う症状のほとんどがこの周辺症状です。 認知症の主たる症状がこの周辺症状と勘違いしがちですが、実は中核症状が認知症の主たる症状です。周辺症状は中核症状を背景にして、その人なりの理由があって引き起こされています。馴染のない環境や居心地の悪い環境によっても引き起こされるようです。
周囲の人の対応で症状が緩和されることも多いので、なぜそのような周辺症状が出たのか原因を探ってあげることが大切です。
認知症には早期発見・治療によって完治するものもあります。
まずは、かかりつけ医等に相談しましょう。
※ 次号では「認知症の症状」に対する対応・介護方法について掲載予定です。
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